小林大伸堂の歴史
小林大伸堂は1893年創業、5代にわたる歴史を持つ印章店です。
明治中期に福井県越前市粟田部町佐山に始まり、以来、現在まで福井の生活にしっかり根ざし、地元の方々の信頼をいただいて営業を続けています。
昭和62年からは鯖江市内に本社を移転オープン。さらに印鑑のインターネット通販の先駆けとなるなど、伝統の技術と心を守りつつ、新しい取り組みを続けています。
受け継がれる歴史
初代 彫刻士 小林小三郎
明治中期、鳥居鉄公氏が福井県今立町粟田部(現越前市粟田部町)にて印章店を開業。
大正13年に初代・小林小三郎が鳥居氏の後を継ぎ、越前市粟田部町佐山 にて「東京堂」の名で印章店を開く。
後に「小林印房(こばやしいんぼう)」と名前を改め、粟田部町大門に店舗を移転。
2代目 彫刻士 小林千松
昭和17年、2代目・小林千松が受け継ぐが、戦時下で短命に終わる。
3代目 印章彫刻士 小林勝三
昭和36年、小林勝三が大阪市にて修行後、3代目を引き継ぐ。
現在も粟田部町大門にある旧本店「小林印房」にて営業を続ける傍ら、20年前からは粟田部町・岡太(おかふと)神社とそれに続く花筐(かきょう)公園の自然保護・保全をボランティアで続けている。
「印鑑を彫るときは、その方の商売や人生が少しでもよくなりますようにという気持ちを常に持って彫らせていただいています。心を込めて作ったものを、偽りのない公正な値段でお渡しする。
地元に店を構えて続けていくということは、そういう嘘のない商いを約束をすることです。」
4代目 印章彫刻士 小林照明
京都の大学を卒業後、石川県金沢市の老舗印章店にて印鑑の修行を行い、「小林印房」に入る。2年間勉強した後、鯖江市の「小林大伸堂」を引き継ぐ。
2000年よりお客様の要望・相談にお応えする形でインターネット販売を開始。
「小林大伸堂の印鑑は単なる道具ではなく、それ以上の想いや願いが込められた〝心を刻むもの〟としてお求めいただくことが多くございます。
皆さまのご縁と絆がより深く広くつながりますように、1つ1つに一刀入魂。これからも心を込めて作らせていただきます。」
5代目 印章彫刻士 小林稔明
京都の大学を卒業後、大阪市内の老舗宝飾店に勤め、ジュエリーコーディネーターの資格を取得。その後4代目と同じ師匠の元で修行し、印章彫刻士の資格を取得。現在は小林大伸堂にてジュエリーコーディネーターの資格を持つ印鑑彫刻士として、開運印鑑から宝石印鑑まで幅広い要望に対応。
「両親から印鑑をもらった時、〝この印鑑には願いを込めた文字を彫刻してある〟と言われました。
新入社員の頃、くじけそうになった時にこれを握りしめると、後押しされている気持ちになりました。
その気持ちをもっと多くの人たちに広めたい。その思いから5代目を継ぐ決心をしました。これからその夢を叶えていきたいと思います。」
大切な財産
印鑑の全記録がわかる「掛け帳」
印鑑を作らせていただいたお客様のお名前と押し型を、当時当店ではすべて帳面に残していました。
いってみれば小林印房の掛け帳です。
初代・小林小三郎の頃には犯罪に印鑑が使われると、誰の印か調べるために警察が掛け帳を見に来たこともあったと聞いています。
私の時代にはそのようなことはもうありませんが、以前、おじいさんの代からお付き合いしている会社の方から、一番最初に作ったゴム印と同じものを作ってほしいと依頼されたことがありました。
掛け帳を一冊一冊探し、ようやく押し型を発見したときはうれしかったですね。
掛け帳は店の帳簿であると同時に、大切な私たちの財産でもあります。
ほとんど手彫りで作っていた
昭和40年、50年代はまだ印刷技術が一般に広まっていなかったので、お店に並べる商品の名前や商品を包む紙に入れるマーク、会社の住所などもすべて私たちが手彫りで作りました。
ゴム印設備を導入したのもこの頃。
ゴム印は劣化しやすいため実印や銀行印には使えませんが、値段が安く押印も簡単にできるので、日常的によく使うものを大量に作るのには向いているのです。
当時、粟田部やその周りには和紙、織物、漆器の工房や店がたくさんありましたから、小さな印から大きなものまでさまざまな印を作りました。中には花や動物などの絵柄を入れたものなども。
岡太神社の角版やご社務所印、朱印帳に押すはんこなどは現在も小林印房で作らせていただいています。